出張の飛行機待ちで、一冊の本を読んだ。
東野 圭吾著『赤い指』。
「早く帰ってきてほしいんだけど」。
前原昭夫が、妻から切羽つまった様子の電話を受けたのは、金曜の夕方だった。重い気持ちで家に帰ると、庭に幼い少女の遺体が。部屋に閉じこもる息子のやったことなのか。
事件と向き合うことで昭夫は、家族と向き合うことになるが──。(講談社BOOK倶楽部より)
ミステリーというよりも、「家族」について深く考えさせられる物語だった。
引きこもりの息子。
対立する嫁と姑。
家族の揉め事から逃げる父親。
そんな中で起きた少女の殺人事件。
殺したのは14歳の長男。
でも、そのことだけは絶対に世間に知られたくないと懇願する妻の頼みに、自ら死体を公園に運び遺棄する父親。
「息子だけはなんとしても守りたい-」、その強い思いが、人として絶対にあってはいけない方向へと2人を向かわせる。
警察に追い詰められ、「少女を殺したのは、認知症の母親(姑)」というストーリーを作り上げる。
・・・ここまで読んで、ものすごく暗い気持ちになった。
この両親、本当におかしい、ひどい、ひどすぎる。
いくら息子のためとはいえ、どうしてこんな発想になるんだろう。
自分を育ててくれた親なのに。
人間って、こんなにも醜いものなんだろうか。
良心のかけらもない。
ハラハラというより、イライラしながら読み進めた。
そして、ラスト。
認知症だと思っていた母親が、実は認知症ではなく、ぼけたフリをしていただけだったのだ。
幸せとはほど遠い息子一家との生活の中で、自分だけの世界に住みたかった母親の作戦、生きる術。
実の息子が、自分に罪をかぶせようとしていることも、すべて、何もかも分かっていた。
「家族の闇」、「孤独な愛情」・・・。
引きこもり、少年犯罪、幼女性愛、認知症、隠蔽工作・・・。
毎日のようにニュースで目にする現在の社会や家族の問題がさまざまに絡みあった作品で読み応えがあった。
東野作品ははじめてだったけど、いろいろ読んでみたくなった。
今週末は読書に決まり。
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