昨日は、突然会社を辞めることになってしまった知人の女性と飲みに行った。
美しく知的で、見るからに仕事ができそうなバリバリのキャリア・ウーマン。
一昨日、会社を辞めることになったと挨拶に来てくれた時には、腰が抜けそうなほど驚いた。
彼女の噂はずっと前から聞いていたけど、周囲からあんなに信頼されている人はなかなかいないし、それより何より、キャリアを買われて転職してきた彼女の、その仕事に対する情熱が半端じゃないことは傍目にも明らかで、彼女がいる業界では、間違いなくキー・パーソンだ。
そんな彼女が会社を辞めるなんて、ただごとじゃない。
何か深い理由があるに違いない。
吹っ切れた様子でにこやかに挨拶に来てくれた彼女だけど、とにかく一度飲んで、退職の本当の理由が聞きたかった。
そう思って、その後すぐに飲みに誘った。
30代に突入してからはるか時が過ぎ、「不惑」も視界に入ってくる年代になった女性が、次のあてもないのに、仕事を辞めるというのはよっぽどのことだ。
彼女とは、ずっと前から顔見知りだったけど、一緒に飲みに行くのは初めて。
一緒に飲んだのが初めてとは思えないほど、いろいろな話をした。
大きな決断をした人は、実に潔い。
気持ちいいほど、正直に語ってくれた。
彼女の退職の本当の理由。
上司から告げられた言葉で、もうこれ以上働く意欲がわかないくらい、精神的なダメージを受けたということ。
とにかくひたすら仕事に打ち込んで頑張ってきたのに、それを「やり過ぎ、頑張りすぎ」として否定されたということ。
彼女の仕事にかける情熱、頑張りに周囲があまりにも頼り切っているという実態を見て、「周囲に良くない影響を与えている」と否定されたということ。
自分の仕事ぶりを一番身近で見ていた上司に、他の職場への異動を告げられたとき、異動の理由として、そう告げられたことが、深く彼女の心を傷つけ、どうしても冷静ではいられなくなったのだそうだ。
「そう見られていたことがものすごくショックだった。私が職場で周囲に迷惑をかけていたなら、他の職場に異動させようとする前に、どうしてもっと早く仕事の仕方を注意してくれなかったのか。完璧な人間なんていない。反省すべき点は素直に反省して直せたと思うのに・・・」と悔しさをにじませる彼女。
「殴られた傷は日が経てば自然と癒えるものですけど、心に受けた深い傷は、なかなか癒えそうにないですね」、そう言って強気に微笑む彼女の目が涙でウルウルしていた。
もっともっと頑張って仕事を続けたかったに違いない。
なんとも理不尽で腑に落ちない話だ。
サッカーチームのエース・ストライカーに、監督が、「お前がいると、みんなお前にパスを回してしまって、次のストライカーが育たないから、チームから出て言ってくれ」と言うようなものだ。
チームが存在する理由は、「ゲームに勝つ」ことなのに。。。なんだか間違ってる。
頑張ってきたからこそ身についた実力が、褒められこそすれ、批判されることなどあってはならないはず。
目立っていたのが、女性だったからなのか?
中途入社の社員だったからなのか?
それとも、日本文化のせいなのか?
彼女が置かれていた環境はよくわからないが、「『出る杭は打たれる』っていうのはこういうことを言うんですね」と言いながら、悲しそうに微笑んだ彼女。
その泣き笑いのような笑顔がものすごく印象的だった。
いろいろな話をしながら、彼女を見ていて思った。
彼女なら、間違いなく、どんな会社でも必要とされるはず。
彼女のような人材を失うなんて、本当に勿体ない、なんて愚かな会社なんだと思う。
彼女も決断を少し早まったのではないかとも思う。
一方で、彼女の頑張りを認めてくれないような会社で、息を潜めて、肩身を狭くして過ごしているより、彼女がもっと羽ばたける職場は他に絶対あるはずとも思う。
そして、そのことに真っ先に気づいたのは、退職を会社に告げた、他ならぬ本人だ。
きっとそれが人生ってものなのかもしれない。
私自身、転職を3回繰り返してきた。
自分の生き方は自分自身の力で、軌道修正していくものなんだと思う。
エールを送りつつ、彼女と飲んでいたら、すっかり午前様。
よって、今日は、二日酔いのため半死状態でボーッ。
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コメント
10年以上働いた会社を辞める決心をしました。
だいたい、同じかな
ここは、私が居る場所じゃない、と
私も同じような理由で8年務めた会社を辞めようと、現在転職活動をしているので共感します。
(主に男性)上司は(特に女性)部下の活躍を快く思わないことが多いです。いわゆる嫉妬です。私は「○○さんみたいに、英語もできて、優秀な人は、この部署じゃなくて他の部署に行きたいんじゃないですか?この部署の仕事なんか誰でもできるし」と言われました。真綿で首を絞められています。仕事もどんどん取り上げられて干されています。特に男尊女卑の考えがある男性上司は、女性が少しでも自分より優秀だったり、意見されたりして、自分が矮小に感じさせられることに耐えられない。その上司が社長の20年来のコバンザメなのでこの会社に将来はないなーと。
>〇〇さん
この記事を書いたのは、もう10年も前ですが、この日のことはとてもはっきりと覚えています。
私もこの人みたいに仕事ができたら、と思うような憧れの女性だったので、その人が、「頑張りすぎ」を理由に職場を去ったことが、なんとも理不尽で、自分の中で消化することができずにいたことを今も昨日のことのように思い出します。
この方の上司は男性でした。
今思えば、上司よりも働きぶりではるかに目立っていた彼女への「嫉妬心」が元にあったのだと思います。
彼女はその後、起業して成功しました。