秋の公園はいい。
目の前に広がる色鮮やかな光景に思わず声が出る。
移ろい行く自然を、これほど強烈に感じる季節は他にないかもしれない。
樹木が燃えるような輝きを放つのは、ほんの一瞬。
すっかり色づいた木の葉は、冷たい風が吹くたびに、我先にと散り急ぐ。
シャカシャカ音をたてながら、枯れ葉が舞い散る公園をバブーと一緒に歩いていると、なんともいえない気持ちになる。
ポールが、今年の秋はイギリスに帰らないことに決めた。
「お金がないからね」と彼は言うけど、本当の理由はよくわからない。
当然、今年も彼が里帰りすると思っていたので、その分はちゃんと2人で用意しておいた。
イギリス人のポールの場合、『里帰り』となると、少なくとも1ヶ月。
休みが少ない日本人のように数日~数週間という選択肢は彼にはない。
わずか数日間しか帰れないくらいなら、高いチケットを買ってわざわざ帰る必要はないというのが彼の考え方。
でも、いくら滞在期間が長いとはいえ、ポールひとりがただ里帰りするだけなら必要なのは交通費だけ。
私が、フランスだのドイツだのと、わずか数日間の忙しい旅行に行くよりよっぽど安い。
だから、それくらいは、きっとなんとかなる。
いや、なんとかしなきゃ。
貯金には興味がないのがイギリス人。
年を取ったら福祉の充実したイギリスに2人で帰ればいい、くらいに思っているだろうポールが将来の蓄えをそんなに心配しているとも思えない。
唯一心配なのが、ポールがいない間、私が仕事に行ったあとひとりぼっちになるバブーだけど、いまやペット産業も充実。
いざとなれば、ペットシッターさんに、日中の世話をお願いすることだってできる。
バブーのことを心から可愛がっているポールだけど、そのことが大きな理由になっているとも思えない。
冬の閑散期なら飛行機のチケット代も安いから、その頃にすれば?!と提案しても、「雪かきしなきゃ」。
「家の前くらいは私がちゃんと雪かきするから大丈夫!」と言っても、「雪かきは僕の仕事。そこまで無責任になれないよ」。
イギリスにいる年老いたお母さんや、精神的に不安定な妹さんのことも心配だろうに、頑として里帰りしようとしないポール。
その頑なさは、「里心」がつかないように無理しているようにさえ私には思えてしまう。
日本での生活にトラブルはないけど、心から自分をさらけ出せる相手はほとんどいない。
若い頃は、新たな世界に挑戦してみたいものだけど、年を取れば取るほど懐かしくなるのが故郷。
本当は里帰りしたくてたまらないに違いない。
でも、ポールが自分で決めたこと。
ヒースロー行きのチケットを用意して、「はい、これ」って渡してあげたい気もするけど、妻として取るべき態度は、彼の意思を尊重すること。
だから、ポールが我慢できなくなって、「少しの間、イギリスに帰りたい」と言い出したときには、慌てず騒がずいつでも応じてあげられるように心とお金の準備は常にしておくつもり。。。
去年、ポールが里帰りしたとき、1ヶ月の滞在後、もうすぐ日本に戻る、という時になってお母さんが突然ひどく体調を崩して入院した。
「帰らないで」と、異国で暮らす息子を想う母親の心と体が、別れる間際になって悲鳴をあげたのだと思う。
ポールによれば、その後、体調も回復し、今では元気に旅行したりして楽しんでいるようだけど、息子の帰りを待ちわびている様子が目に浮かぶ。。。
人生は短い。
いや、ギネスブックに載るくらい長生きしてくれたところで、元気なお母さんと過ごせる残された時間は、毎年毎年、少なくなっていく。
そんなことを考えていた今日。
物思う秋。。。
ただの取り越し苦労だといいけど。
読んでいただけたら、今日も
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コメント
こんばんは。
もう何ヶ月もブログ、お邪魔させていただいてます。
いろんなことにいろいろ思うことがありますが、いつも
管理人さんのコメントにはふむふむと思うことが多いです。
今日がはじめてではありませんが、わたしもそう思ったよ!と
コメントしたくなることばかりです。
今夜はなんとなく、ひと言残してみようかなという気持ちになりました。
わたしは北海道にすんでいるわけでもわんちゃんと暮らしているわけでも
ないけど、いつもいつもブログ楽しみにしています。
でも特に今日のお話には思うところがありました。
また読みにきます。
あちゃこ
今年の秋は、とっても短そうですね。
ポールさんは日本で生活していて多少はストレスが
あるでしょうけど、eri-ponさんみたいに
思いやりのある奥さんがいて幸せだと思いますよ。
お互いの立場を思ってあげるって大事なことですもんね。
(と、しみじみと自分の事を振り返ってみたりして。)
またまた、本日の日記についてなるほどと思い、
コメントさせていただきました。
前回、恋愛にたいしてアドバイスをいただいてから、
彼の束縛心もなんとなく理解ができ、少し前に進みだしたのですが、
今度は、将来の事を考えると、いろいろ難しい問題が山積みです。
お互い、自分の家族の近くで生活したいっていう思いが、心の
どこかにある限り、どちらかが“犠牲”って言葉は使いたくないけど、
どこかで我慢しなければいけない状況もでてくるんですよね。。
想い合っているからこそ、考えなければいけない事も多いんですね。
私にとっても秋は物思いに耽る季節です{もみじ}
>あちゃこさん
こんばんわ。
初コメントありがとうございます。
いつも読んでいただいていたんですね。
自分が好きで続けていることとはいえ、そう言っていただけるのが何よりの励みになります{スマイル}
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
>Joyceさん
本当に今年の秋は短そう。
お散歩してても、寒い、寒い。
実家の距離があまりにも離れているので、当然のことですが、ポールの方が、アウェイにいることがどうしても気になってしまいます。
今年は、ポールを残して二度も旅行してるので、罪悪感半分、思いやり半分・・・というのが正直なところです。
>めいひなこさん
前回のアドバイスが、ほんの少しでもお役に立てたようで嬉しいです。
どんな夫婦でも結婚して一緒に生活するとなると、問題はたくさん出てくると思いますが、特に国際結婚の場合は、いかんともしがたい距離の問題や、文化・週間の違いが立ちはだかるので、お互い根気よく乗り越えていく覚悟が必要です。
お互いを思う一途な強い気持ちさえあれば大丈夫!
きっとどんな難題も乗り越えられるはず。同じ境遇を味わってきたものとして、心から応援しています{スマイル}
こんにちは!う~ん、eri-ponさんの思いやりの気持ちが伝わってきて、じ~んとしてしまいました。大丈夫、その気持ちがご主人様にもしっかりと伝わっているはず。そんな優しいeri-ponさんと可愛いバブーに囲まれて、幸せいっぱいなんだと思いますよ、きっと。どうしても、帰りたくなればポールさんもeri-ponさんにお話しすることでしょう。私も、日本への一時帰国は毎年楽しみにしています。が我が家にも2匹の猫がいるので、やはり後ろ髪を引かれる思いですが、その分帰宅したときにたくさんラブチャージしています(笑)
>だいごろうさん
ポールも日本で生活をはじめて10年。その間、結婚もし、わんこも飼い、当然のこととはいえ、長くいればいるほど、日本での手かせ足かせがどんどん増えていることが、彼の帰国をためらわせているのではないかと、いつも心の奥で心配しています。
ただ、帰りたくなったら、イギリス人ゆえ、タテマエもなく正直に言ってくれると思えるのが、変な言い方ですが、『救い』。
そのときは、ただ黙って・・・、というスタンスでいられるよう、常に心の準備はしておかなくちゃと思っています。