今日は、「ハリー・ポッター」シリーズの翻訳者として有名な松岡佑子さんの講演会に行ってきました。
1943年(昭和18年)生まれで現在スイス在住の72歳。
スーツを着こなし、フワフワと柔らかそうなカーリーヘアをなびかせて颯爽とステージに現れた松岡さん。
「ハリー・ポッター」のファンや、北海道で通訳・翻訳者を目指す人たちのために、「ハリー・ポッター」との出会いや、翻訳時の苦労、同時通訳者時代のことなど、質問を含め1時間半にわたってたっぷりと語ってくれました。
低く落ちついた声、穏やかな語り口、丁寧で美しい日本語・・・、そこから感じられる自信と誇り。
これまでの間、ベストセラーだからこそ多くの人から「誤訳」だの、「珍訳」だのと指摘され、激しいバッシングに晒されて、本が売れるのを喜んでばかりもいられない、想像を絶するような辛い経験も相当あったと思うけれど、「自分の訳を何度読み返しても、面白いと思うし、満足」ときっぱり答える姿、潔さ良さに素直に感動。
うつ病を克服した貧しいシングルマザーから億万長者になった著者のJ・K・ローリングさんのサクセスストーリーはもちろん、松岡さんの成功も 「魔法」と言われているけれど、「魔法」じゃない、類稀なる才能を持った努力の人たちだったのだと思う。
松岡さんは、「大学生になるまで生の英語に触れたことはほとんどなかったし、初めて海外に行ったのは28歳のとき」なのだそう。
帰国子女でもなく、勉強して身に付けた語学力で、30代で国際会議デビュー、その後、通訳・翻訳界の第一人者の地位を築いているのは、情熱と努力以外の何ものでもなく、心からリスペクト。
講演が終わり、後半のQ&Aのコーナーで出た質問。
「英語の小説を読むのが好きなので、趣味で翻訳のアルバイトをしたいと思っていますが、仕事はどうやったら見つかりますか」というもの。
私の通訳レッスンの先生なら、「甘い!甘すぎる。翻訳は『趣味』でできるものじゃありません」と一喝されて終わりそうな質問だけれど、松岡さんは、少し考えてから、こう答えてくれた。
「仕事でも、仕事にならなくても、好きなことは是非続けてください!人生、好きなことをしなくてどうするんですか?」。
そして、「何年も英語の勉強を続けていますが、英語の力が上がっているという実感がまったくありません。どうしたらいいでしょうか?」、という質問に対しては、「私自身も、英語力が充分だという実感はいまだにありません」、と。
「英語の通訳・翻訳の世界では高い地位を築いていますが、それでも、英語圏で育っていませんから、文化的なことは今もわからないことはたくさんありますし、自分の英語力が充分だと思ったことはありません」、と。
松岡さんでさえ、「英語力が充分だと思わない」と言うのだから、いわんや・・・をや。
「あの人より自分の方ができる」、とか、「あの人にはかなわない」、とか、他人と比較することは簡単だけれど、自分自身のモノサシ、自分の中の、「こうありたい」と目指す姿・・・で測ると、勉強すればするほどゴールは遠のいていくもの。
だから、上達している実感がない、でも、だからこそやりがいがある。
そして、最後に、通訳・翻訳者を目指す人たちへのメッセージは、「3つの”D”」。
”Destination”,”Deliberation”,”Determination”.
「進むべき方向をしっかりと見定めて」、「よく考えて」、「絶対にやり遂げるんだと心に誓うこと」。
努力して成功を手に入れた松岡さんの言葉は重く、ガンガン心に響く。
「「語学力」というのは単に会話ができることではないんです。どんな仕事に就くにしても、知識と一般常識をどれくらい持っているか、そしてチャンスをつかめる備えをしているかどうかが大切」。
英語の勉強を続ける上で大いに刺激なった今回の講演会。
聴けて本当に良かった。
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