引き際

今年3月に開かれた映画「トップガン・マーヴェリック」のトム・クルーズ来日記者会見。

そこに、これまでトム・クルーズが来日したときには必ず通訳を務めていた戸田奈津子さんの姿がありませんでした。

「この年(86歳)になってパッとうまく通訳できなくなったらトムに申し訳ない」と思って、自ら今回の通訳を降ろして欲しいと申し出たそうです。

3年前に講演会に行ったとき(←その時のことはコチラから)、トークのテンポが早くて、本当に頭の回転が速い人なんだな~、と恐れ入りましたが、その時すでに83歳でしたからね。

通訳・字幕翻訳界のレジェンド。

私が見た洋画の、大ヒット作の字幕翻訳はほとんどが戸田奈津子さんでしたから、戸田さんに洋画の面白さを教えていただいたようなものです。

私も通訳に憧れて、数年間通訳学校に通ってかなり真剣に勉強していたことがありますが、英語が少し得意なくらいじゃ、まったく手も足も出ませんでした。

英語力に加えて、日本語の美しさ、言葉の天才的なセンスと膨大な知識、頭の回転の速さ、多少のことではめげない神経の太さが必要で、勉強を頑張ればできる、というものではありませんでした。

通訳を仕事にするということは、常にインプットとアウトプットを繰り返して、一生「大学受験生」みたいな生活を続けることになるんだな、と思ったものです。

そんな仕事を80歳を過ぎても第一線で続けているなんて、神業としか言いようがありません。

でも、レジェンドだからこそ、難しいのが「引き際」なのでしょう。

大スターからのオファーに「No」という勇気。

今回も通訳をしたかったと思いますし、問題なくできたのではないかと思います。

でも、「万一」、それができなかったら・・・。

大切な記者会見をグダグダにしてしまったら・・・。

相当な葛藤があったと思います。

自分が期待に応えられないかもしれないと認めるのはつらいこと。

ですが、「もうお辞めになった方が」と周囲から言われるのはもっとつらい。

レジェンドらしい引き際。

通訳は引退されましたが、「トップガン・マーヴェリック」の字幕翻訳は前作に引き続き今回も戸田さんで、今後も字幕翻訳は続けられるとのこと。

トム・クルーズも今年60歳、還暦ですからね~。

前作「トップガン」から36年。

時の流れの早さよ・・・。

映画も観なくては!

 

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コメント

  1. [英語力に加えて、日本語の美しさ、言葉の天才的なセンスと膨大な知識] 
    本当にこれに尽きると思います。
    戸田奈津子さんが何故素晴らしかったか、やはり日本語力の差だったのではないかと。
    (ここ2~3年仕事のオフとオンの言葉を使い分けられない、元々知らない、間違っているのに気付かない(笑)大人にダメ出し続きでストレスMax😭)
    責任感も人一倍、でも楽しめている。
    この仕事を全力で務めていたからこそ、先読みも全力の早さでしたのでしょうね。
    人間力の差ですかね。

    • 戸田奈津子さんがここまで字幕翻訳家として有名になったのは、日本語力ゆえ。
      本当に素晴らしいと思います。
      異なる言語と文化の国で、限られた文字数を使って、映画のストーリーを歪めることなく伝えるなんて。
      86歳で今も現役って、いったいどんな頭の中なのか。
      映画界の宝。
      瞬発力が求められる通訳は引退したとしても、字幕翻訳ではまだまだ活躍してほしいと思います。

  2. 戸田奈津子、と最後の字幕担当のテロップを確認して、「やっぱりね」と昔から思ってました。字幕って訳せばいいってもんじゃないんですよね。映画の雰囲気を壊さず、それでいて日本的な表現も大切。私も感覚的でしか分からないけど、見終わった後に違和感なくいい映画だったなあ、と思えるのが大事。戸田さんの字幕はその点、安心して映画を楽しめます。引き際も大切ですが、現役で頑張ってほしいですね。

    • 我々世代が見てきた洋画。
      最後のテロップの字幕担当は必ず戸田奈津子さんでしたよね。
      高校時代に観たトップガンも、そして、今回のマーヴェリックも戸田奈津子さん。
      本当にまだまだ現役で面白い洋画をどんどん翻訳してほしいと思います。

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