年に数回のペースで海外旅行を楽しみ、「海外通」を自認しているうちの母。
そんな母にとって、海外旅行をするときに欠かせないのが、「ウェットティッシュ」と「ストロー」。
一緒に旅行をするとき、荷物を軽くするように言っても、かなり大量に持ち込みます。
食事の前に手を綺麗にふき取らないと食事ができず、冷たい飲み物はストローがないと飲めません。
決して病人という訳ではありません。
ただただ綺麗好きで潔癖症。
年を取ったお嬢様なのです。
そんなわけで、『おしぼり』が出てくることなどありえないヨーロッパのレストランに行くと、同じツアーの他の参加者たちの視線をよそに、カバンの中から、ウェットティッシュを取り出し、必ず私にも「ちゃんと手を拭きなさい!」と渡してくれるので、2人で手をフキフキ。
行きの機内から帰国するまで、食事の前の2人で手をフキフキはずっと続きます。
そして、飲み物。
ミネラル・ウォーターやコーラの大きなペットボトルを口に当てて豪快に飲む人たちの横で、母はひとり、ストローを挿してチューチュー。
思わずストローを忘れたときには大騒ぎしたあげく、「ねぇ、ストロー、持ってる?!」。
そんなもん、普通持ってるわけないじゃん!
綺麗好きの母には、パンのくずが飛び散るバゲットタイプのサンドイッチも苦手。
たとえそれが公園のベンチで食べているときでも、周りを汚さないようにと気をつけながら食べるので、包んだ袋からサンドイッチの先をほんの少しだけ出して食べます。
普通は、半分くらい出して、口とバゲットをほぼ平行にして、緑の木々や美しい風景を見ながら食べるでしょ。
でも母は、いつも真下を向いて、パンくずを飛ばさないようにバゲットと袋を凝視。
その姿は、まさに、『縦笛をならい始めたばかりの小学生が必死に練習しているよう』。
とてもサンドイッチをおいしそうに頬張る姿には見えません。
「海外通」かどうかは、振る舞いやちょっとした仕草で意外と分かるもの。
せめて海外にいるときくらいは、汚れた手をジーンズでぱっぱと払い、サンドイッチを鷲掴みにしてかぶりつき、ペットボトルに口を当てて直接飲むようにならないと、海外通とは呼べないだろうな~、きっと。