もう数ヵ月前のことになるけれど、ふと思い立って後輩Aちゃんを飲みに誘った。
ずっと以前からお互い知っているものの飲んだことはない相手で、連絡は普段から彼女と仲のいい先輩Bさんにお願いして、3人で飲む予定だった。
連絡を取ってもらった先輩Bさんからのメールに「Aちゃんから回答あり。『やぶさかでない』とのことです」、と書いてあった。
「やぶさかでない」という言葉が引っ掛かった。
「そんなに飲みに行きたいなら、行ってあげてもいいですよ」というネガティブな表現だと受け止め、その言葉に思いっきりカチンと来た私は、メールを見た瞬間、「やっぱり今は仕事が立て込んでいて忙しいので、落ち着いたらまたお誘いすることにします」と、即座に断りのメールを入れた。
私にも一応、先輩としてのプライドはある。
仕方ないから飲みに行ってあげてもいいかな、と思われるくらいなら、もう二度と誘わない!
言葉の誤用に気が付いたのは、しばらくたってからのこと。
確かネットニュースで取り上げられていたトピック。
「やぶさかでない」という言葉の意味は、「〜する努力を惜しまない」「喜んで〜する」というポジティブな表現。
知らなかった。
間違ってた。
調べてみると、「~してやってもいい」という、仕方なくやるような意味の誤用が広まっているため、使わない方が無難と言われている言葉の代表例だった。
「文法では否定しているが、意味は肯定しているという、日本特有の表現」で、「なぜこのような表現をするかというと、日本では目上の人に、自分自身の思いを主張するよりは控えめに表現することが好ましいとされることが大きいため」と説明があった。
特に目上の人に対しては、「喜んでやります!」というよりは「やぶさかではないです」「やぶさかかではありません」といった表現が好ましい、と解説しているサイトもあった。
ということは、後輩Aちゃんは、「喜んで!」と直接的に言わず、日本人らしく、極めて控えめに表現しようとした結果、この言葉をチョイスしたかもしれない。
ただ、私同様、誤用が一般的なだけに、誤用の線も拭えず、わかりにくい~。
日本人同士が日本語で会話していてこんな誤解が生まれるのだから、他言語で通訳するならなおのこと。
映像翻訳の大家、戸田奈津子さんが講演会で言っていた。
通訳も翻訳も、それを仕事にしようとする人は「とにかく日本語をもっとちゃんと勉強しなさい」。
通訳場面で「やぶさかでない」という言葉に遭遇する前に、日本語の本当の意味を知ることができて良かった。
日々是勉強。
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